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『電通と博報堂は何をしているのか』

電通博報堂は何をしているのか』中川淳一郎星海社新書)

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……仕事してるんですよ。

そういう話じゃないですね。

 

近接業界にいる身として、

そして現在進行形で代理店さんとお仕事をしている身として、

新人女子社員の過労死事件の時には正直、モノ申したい気持ちがとてもありました。

でも世論は怖いので、身内では話題にできても、書けないよね…というのが続いていて。

 

そう沸々していたところで拝読した新書。

 

「月当たり残上時間が100時間を超えたくらい過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」

という武蔵野大の長谷川秀夫教授のFBの発言も載っておりまして。

 

そしてそれに、

「実はこの発言に対し、当の広告業界の人間は首肯する面もあったのである。「情けない」とは思わないものの「100時間を超えるくらいなら、よくあることだ」と考えている」

「きつい部署に入っても『きついです!』と手を挙げてしまえばいいんです。ふてぶてしく生きればいい。(中略)当然1年目でそんなことをできるわけがないけど、だからこそ、そうした対応をできない若い子をあの部署に配属させたのが問題です」

 

という、実際に代理店で働く方のコメントをひいているのです。

 

そうなんだよ……。

情けないとは言わないんだけども、よくあることなんだよ。

たとえ一年目だろうと、社会人なら、「あ、心の風邪ひくわ」って、自分で察知するところまで仕事なんだよ。ポテンシャルで採用してるんだよ新卒って。最初は何もできないってわかっているんだよ新卒って。伸び代を買ってもらってるんだよ。

 

自分も新卒で今の会社にいるのですが。

新卒一年目なんて、わけのわからない自身に満ち溢れていて、

それで大抵めんどくさい事件を起こしてくれて(自分もやらかした)、

上司や先輩がいケツ拭きに行って、「働くとは」というのをそこそこ偉い人や、先輩たちから学びながら、二年目はまだ無理でもせめて三年目には使えるようになります!ってやるもんでしょうよ。

今10年目ですが、かつての上司や先輩から「ほんっとにかわいくなかったわー!これで3ヵ月(いたところは3年も待ってくれるところではなかった…)で使えるようにならなかったら絞め殺してやろうかと思ったよね!」って言われるわけですよ。えへへ。ありがとう先輩たち。

 

一年目で、なんで抱え込んだのかがわからない。上司が送検されたから事実としてパワハラはあったんだろうけど、それでも上役はその一人しかいないなんてことはあり得ないわけで。

きっとこれまで、どうしたらいいかわからないような難題とか、挫折とかを味わってこなかったんだろうね。だから「逃げる」っていうコマンドを入力できなかったんだろうね。

と、仲間内で話していたことが、活字になっている一冊です。

 

あと。クレームや炎上の部分もちょっと楽しい事例がありました。

 

「かなり批判を浴びたある広告。担当していたのは若手の女性クリエーターだった。人生初の炎上で、陰鬱な気持ちになってクライアントのところに謝罪に行った。するとクライアントはこう言ったのだ。

 

『世の中の議論のきっかけをつくたんだから大成功だね」

さらには、彼女の師匠筋にあたる先輩クリエーターもこう言った。

『いやぁ、炎上したってのいいね、話題になって良かったよ。お前さ、『狙ってやったんですよ!』って言っとけばよかったのに!』」

 

いいね。

いや、本当にいいと思うんですよ。

著者も書いていますが、何十万とアクセスがあって、そこで数件のクレームがついたっていうのでおろおろするとか、何言ってるかわかんないんですよね。

そんなので広告取り下げるんなら、私ガンガンに電話しますよ。

少なくとも、クリエーターは炎上リスクとか考えないで、

「刺さる」と思うものを提案してくれないと困るんですよ。リスクを考えるのはこっちの仕事なんで。

 

炎上といえば。

資生堂の「25歳からは女子じゃない」というインテグレートのCM、すごく好きだったんです。

女子じゃねえよ。25歳ですよ。四半世紀生きて「女子」ってなんですか。女性ですよ。

そろそろ責任もって働いてほしいし(実際そういうことを言われたよ自分が25の時)、

「がんばってるを顔に出さない」もそうなんですよ。頑張っていようといなかろうと、仕事は結果がすべてなんで。途中経過頑張ってたけど契約取れなかったねとか、さ。どうしろっていうのよ。慰めればいいの?私、無言でフォローに回れらた経験しかないわ。

今この価値観?という書き込みをした人たちは、今の企業で生きている方々なのか。リアルに企業で働いてみろ。夏帆がいったセリフは全部本当に思うことなんだよ。週末ごとにアップされる結婚式の写真に「まじかー」って思うんだよ。もう若手って言えないなって突きつけられるときなんだよ。むしろ応援してくれてるなって思ったよ。

私がいる会社は上場しているそこそこの規模の会社だが、申し訳ないけれどこの価値観で成り立っているよ? 女性が普通に活躍している社会だったら、保育園落ちた日本死ねという投稿はそもそも発生しないんですよ。まだまだ男性社会なのです。

 

疲れた顔して、疲労を前面に出している女より、

目の下にクマがあっても、「おはようございます!」って空元気ってわかる声でも言う女の方が、かわいがられるんですよ。当たり前ですよね。仕事するときにマイナスな要素が最初っから出てる人には頼みませんよ。

男性だって同じ。疲れてるって主張うるさいからあいつには仕事ふらねーわって、普通にあるじゃない。多少ミスしても、愛想のある男性とか、なんか愛嬌のあるおっさんとかの方が、仕事頼みやすいし、実際仕事しやすいでしょ。

 

オンエア見た時に、お。一石投じてくれるのかな。

と思ったので、なんかね。

仕方なかったんだろうな、と思う反面、残念だなーと。

 

 

閑話休題

これからは、答えのない問題に取り組まなければならなくなる、と言われていて。

でもそれって、今のクリエイティブがかかわる仕事はすでにそうなわけです。

「答えがない=最適解と思われるものを探すために必死であがかなければならない」

のです。

そしてそれには、ものすごく時間がかかる。

それをチームでやるか、個人プレイヤーに託すか、代理店の特性上様々あるにしても、

人が頭を使わなければならないし、その時間は何物にも代えがたいと、私は思います。

それを「なんかもうちょっとでいい感じのところまで行けそうだけど22時なんでお開き!」とかは、むしろバカなんじゃないの? と思うわけです。思考が途切れてしまうよ?

 

 

代理店で働いている人たちは、ちょっとネジ飛んでる?っていう方もいるけど(誉め言葉)、みんな普通の人間なんですよ。なんでそこをわからない人が多いんだろうね。

というのが、一番きれいにまとめた感想です。

 

電通博報堂、両方と仕事をしたことがあれば「あーわかるわかるw」と。

片方としかなければ「へーそうなんだー」と。

両方とも名前は聞いてるけど何してるの?であれば、「ほー」となる一冊です。

 

 

中川淳一郎電通博報堂は何をしているのか』(星海社新書)

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